AI開発の見積もりは、
なぜ会社ごとにこれほど違うのか
同じ「社内の文書を検索できるAIを作りたい」という相談でも、A社は80万円、B社は500万円、ということが普通に起きます。どちらかがぼったくっているわけではありません。多くの場合、見積もりの前提がそろっていないだけです。
この記事では、AI開発の見積書を受け取ったときに、どこを見れば金額の差の理由がわかるかを、受ける側(開発会社)の立場から整理します。
差が出るのは「作る費用」ではなく「かかり続ける費用」
AIのシステムの費用は、大きく4つに分かれます。
- 初期構築:設計・実装・検証。一度きり
- データの準備:社内文書をAIが読める形に整える作業。文書の量と状態で大きく変わる
- 基盤の月額:サーバーやデータベース、AI用の外部サービス。使っていなくても毎月かかる
- AIの利用料:質問1回ごとの従量課金。使った分だけかかる
見積書で目立つのは1番目の金額ですが、3年使ったときの総額を決めるのは2〜4番目です。たとえば同じ社内RAG(社内文書を読ませたAI)でも、専用の検索サービスを月額で契約する構成と、すでに動いているデータベースに機能を足す構成とでは、毎月の固定費がまったく違います。当社が小規模な社内RAGを30万円台から、保守を月1万円からお受けできているのは、この固定費を最初から作らない構成にしているからです(詳しくはRAGの構築費用はいくらか)。
相見積もりでは、初期費用だけでなく「3年間の総額」を各社に出してもらってください。それだけで比較の精度が大きく上がります。
見積書で確かめる7つの項目
- 1. 何件の文書・データを前提にしているか。100件と10万件では作り方が変わります。前提が書かれていない見積もりは、後から増額されがちです。
- 2. データの準備は誰がやる前提か。スキャンしたPDF、表だらけのExcel、古い版と新しい版が混ざったフォルダ。これを整える作業が見積もりに入っているかどうかで、金額は何倍も変わります(なぜRAGの見積もりは当たらないのか)。
- 3. 月額費用の内訳。サーバー、データベース、外部のAIサービス、保守。それぞれいくらで、どれが「使わなくてもかかる」費用なのか。
- 4. AIの利用料の試算の前提。1日何件の質問、1件あたりどのくらいの文章量で計算しているか。前提があれば、自社の使い方に合わせて計算し直せます(AI導入の「月額」はいくらになるのか)。
- 5. 「正しく答えるか」の確認に何日使うか。AIは作った直後が一番ずれています。実際の質問で試して直す期間が入っていない見積もりは、安く見えて後で困ります。
- 6. 権限の設計が入っているか。「他部署の資料が見えてはいけない」なら、それは追加の設計です。後から足すと高くつきます(社内RAGで他部署の資料が見えてしまう問題)。
- 7. 納品物に何が含まれるか。ソースコード、設定、使い方の資料、運用の引き継ぎ。特にソースコードの扱いは、将来ほかの会社に保守を頼めるかどうかを左右します。
安い見積もりが安くないとき、高い見積もりが高くないとき
安く見えて後で高くつくのは、データの準備と検証が入っていない見積もりです。作ったあとに「思ったように答えない」となり、追加の見積もりが出てきます。
高く見えて実は妥当なのは、文書の整理や権限設計、運用の仕組みまで最初から入っている見積もりです。金額は大きくても、追加が出にくい。
単純に高いのは、必要以上の月額サービスや、大きすぎる構成が前提になっている見積もりです。「なぜこの構成なのか」「もっと小さく始められないか」と聞いて、説明がない場合は注意が必要です(社内RAGは、小さく始めたほうが安い)。
見積もりを依頼する前に、用意しておくと話が早いもの
- AIに読ませたい資料の例を数件(形式と状態がわかれば十分)
- 誰が、1日何回くらい使いそうか(ざっくりで構いません)
- 見せてはいけない人や部署があるか
- 月額として許せる上限
- いつまでに、最初の形を見たいか
この5つがそろっていれば、各社の見積もりの前提がそろい、比べられる見積もりになります。
見積もりの金額の差は、前提の差です。前提をそろえてから比べれば、どこが本当に高いのかが見えてきます。
「うちの場合はいくらになるか」だけのご相談も承ります
Posii株式会社は、社内RAG・AIチャット・Webアプリを、設計から運用まで自社で作っています。他社の見積もりをお持ちなら、前提の違いを一緒に確認するところからでも構いません。