プロンプトに具体例を入れると、
応用が効かなくなる?
具体例を書くと、AIはその例に引きずられるのではないか。この心配は正しく、そして多くの場合は逆になります。
AIに指示を出すとき、こういう迷いが出ます。
「具体例を書くと、その例に引きずられて応用が効かなくなるんじゃないか」
もっともな心配です。そして実際には、ほとんどの場合で逆のことが起きます。
これは心理学ではなく、AIの学習の話
この現象を指す確立した心理学用語は、厳密にはありません。人間の心理ではなく、大規模言語モデルの挙動をどう誘導するかという話だからです。
最も近い専門用語はFew-Shot Prompting、あるいはIn-Context Learningです。「こういうタスクをやってほしい」と指示するとき、いくつかのお手本(ショット)をプロンプトの中に置いておく。AIはそこから「こういうパターンで返せばいいのか」を掴み、より正確に実行しようとします。
重要なのは、AIが具体例から学ぶのは「答えの内容」ではなく「答えの形」だという点です。ここを取り違えると、「例を入れたら例しか返さなくなった」という失敗になります。
抽象的な指示は、なぜ効かないのか
汎用的なプロンプトのほうが理想的に思えます。しかし現在のAIは、人間ほど「行間を読む」のが得意ではありません。
- 抽象的な指示:「もっと話を掘り下げて」——解釈の幅が広すぎます。何を、どのように掘り下げるのか分からず、結局は同じような質問を繰り返すか、的外れな方向へ深掘りします。
- 具体的な指示:「フットサルのどんなところが好き?と聞いて」——AIは「相手の行動に対して、その理由や感情を聞くという型を真似すればいい」と受け取ります。次に相手が釣りの話を始めたら、「釣りのどんなところが好き?」と応用できます。
つまり具体例は、AIに望ましい対話のテンプレートを教えるための手段です。例そのものを再生させたいわけではありません。
それでも応用を効かせたいなら、例を「型」に上げる
心配が現実になるとすれば、具体例が具体的すぎて型が読み取れないときです。対処法は、例を消すことではなく例を一段抽象化して、型として明示することです。
たとえば、こう書き換えます。
ユーザーが話した特定の行動や出来事(例:「フットサルをしている」)に対して、 すぐに別の話題へ移らないでください。最低2〜3ターンは、その話題を掘り下げてください。 その際、以下の「深掘りの型」を参考に、相手の感情や価値観に焦点を当てた質問をしてください。 ・理由を尋ねる型 :「なぜそれが好きなんだい?」「始めたきっかけは?」 ・感情を尋ねる型 :「それをしている時、どんな気持ちになる?」 ・価値観を尋ねる型 :「それは、キミにとってどんな意味を持っているんだい?」 ・具体的な状況を尋ねる型:「チームの仲間とは、どんな雰囲気なんだい?」
具体例(フットサル)は残したまま、その一段上に「質問のパターン」を置く。これでAIは、話題が変わっても型のほうを持ち越せるようになります。
プロンプトは、指示書ではなく教材だと考える
この書き方に切り替えると、プロンプトの設計は「命令を並べる作業」から「お手本を選ぶ作業」に変わります。
どの例を見せるかで、返ってくるものの質が決まる。例が一つしかないなら、その一つは慎重に選ぶ価値があります。
プロンプトを書くことは、命令を並べる作業ではなく、お手本を選ぶ作業です。