私は間違いなく資本主義者です。競争が社会を前進させ、より良くすると信じています。しかし、資本主義はあくまで「より多くの人が幸せになるための手段」であり、それ自体が目的ではありません。したがって、ベーシックインカムの支持と資本主義者であることは矛盾しないと考えています。
競争すること自体が目的ではなく、その結果として、より効率的に多くのモノやサービスが安価に提供され、人々がより楽に、豊かに暮らせる社会が理想です。ここには「楽をすること=悪」という前提はありません。むしろ、「楽に稼げるほうが良い」のです。
効率性の向上は、資本主義やテクノロジーの役割です。しかし、「幸福」という価値については、政治が担うべき領域だと考えています。
ではなぜ、他国ではある程度幸福が実現されているのに、日本ではそれが難しいのか。その理由の一つは、1980年代に無理をして経済成長を遂げたものの、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代の価値観を40年以上も引きずってしまっている点にあります。「頑張ること」が美徳や目的になってしまい、経済成長の“先”にある「幸福な社会」を目指す意識が希薄です。
さらに深刻なのは、多くの高齢層が政治への批判意識を持たず、財務問題、NHK問題、裏金・利権問題といった社会の成長や国民の幸福を妨げる構造を容認してしまっていることです。「政治はタブー」という空気の中で50年生きてきた結果、政治参加や政策への関心が極端に低く、その“ツケ”が今の日本に回ってきているように感じます。
つまり、今の日本では「お金を稼ぐ力」はあっても、「政治に対する健全な関心と知識」が欠けている。両輪で進むべき社会が、片輪で走り続けてきたのです。
だからこそ、私はベーシックインカムのように、「資本主義で得た効率の果実を、社会全体の幸福に還元する仕組み」が必要だと考えています。競争を通じて得た成果は、再分配によって全体の幸福に結びつけるべきです。それが本来の資本主義のあるべき姿だと思っています。