
世渡り上手の秘訣:相手の「信用」を見抜く力
「世渡り上手な人」と聞くと、あなたはどんな人を思い浮かべるでしょうか? 愛想がいい人、話がうまい人、それとも……。最近、私が考えているのは、「相手が何を基準に人を信用しているかを把握できる人こそ、真の世渡り上手なのではないか」ということです。
「信用」の正体は十人十色、そして揺るがない
私たちは往々にして、「信用」という言葉に固定された意味があると錯覚しがちです。しかし、実際には「信用」の形は人それぞれ。たとえば、
- 銀行が信用するのは「予定通りにお金を返してくれる人」
- ビジネスにおいて「話し上手」や「身だしなみが整っている」ことで信用を得る人もいるでしょう。
私の祖父は昔、「家を持っていない人間を信用するな」とよく言っていました。祖父にとっての信用は、
- 地主
- 持ち家(住んでいる期間が長い)
- 持ち家(住んでいる期間が短い)
- 借家住まい(値段相応)
という明確な序列があったようです。たしかに、お金を貸すという場面を想定すれば、物理資産がある人の方が「夜逃げしにくい」という点で安心感があるというのは一理あります。
そして、この「信用」の基準は、その人の価値観や育ってきた文化に深く根ざしていることがほとんどです。アメリカにいた経験からよくわかるのですが、キリスト教徒がキリスト教徒以外の人を信用しないというのはよくある話です。仏教徒が彼らに「仏教の人だって信用できる」と説得するのは、ほぼ不可能だと感じます。相手の信用感を根本から書き換えることは、ほぼ不可能だと言っていいでしょう。
相手の「信用」基準を探る難しさ
もちろん、「あなたにとって信用とは何ですか? どんな人を信用しますか?」と直接尋ねれば教えてくれる人もいるかもしれません。しかし、多くの場合、そうした質問はかわされたり、そもそも相手自身がそこまで意識していなかったりすることも少なくありません。相手の信用基準は、そう簡単に表面に出てこないものなのです。
自分の「信用」の軸を理解する
興味深いことに、自分の「信用」の尺度を理解することすら、意外と難しいものです。私自身も、祖父の影響を強く受けていると感じています。また、何らかの分野で結果を出している人を信用する傾向があります。これは、私自身も似たような境遇にあるからかもしれません。一方で、表面的な要素(例えば服装や宗教など)で人を判断するような「信用の尺度が浅い」と感じる人に対しては、あまり信用を置かない傾向があります。世界中を回ってきましたが、そうした表面的な要素やその国一般的な文化に基づいて人を判断する人の中に、たいした人物がいなかったという経験もあり、この傾向を裏付けています。このように、自分の「信用」の基準さえ、明確に言語化するのは骨の折れる作業なのです。
世渡り上手は「信用」の探偵
だからこそ、世渡り上手な人ほど、相手が何を重視して人を信用するかを巧みに見抜く能力に長けているのだと思います。彼らは、相手の言動や価値観、置かれている状況などからヒントを読み解き、「この人はこういうポイントを信用と見なしているな」と推測するのです。
そして、その見抜いた「信用」のポイントに合わせて、自分を適切に見せることができます。例えば、誠実さを重んじる相手には、約束を確実に守る姿勢を見せる。迅速さを求める相手には、スピーディーな対応を心がける。このように、相手が求めている「信用」の形に沿って行動することで、円滑な人間関係を築き、結果的に人生をうまく渡っていくことができるのではないでしょうか。
相手の「信用」を見抜く力は、日々のコミュニケーションの中で培われる、まさに「人間力」とも言えるスキルです。あなたも、周りの人が何を基準に人を信用しているのか、そして自分自身が何を信用しているのか、少しだけ意識して観察してみてはいかがでしょうか。